「強みの上に築け!」(ピーター・ドラッカー)

インドへの進出にとって、日本企業が長年培ってきた技術やブランドを活用するために、インドの特許制度、商標制度などの知的財産制度を利用することが益々重要になってきていることを日本企業の進出のお手伝いをしながら痛感しています。

ビジネスとしてインドに進出する以上、インドの市場を開拓し、高い利益を上げ、インドの社会に貢献し続けることが目的なのではないでしょうか。しかしながら、全ての日本企業がインドで成功できるわけではありません。事業環境をしっかりと把握し、自社と他社の強みと弱みを理解し、様々な選択肢を勘案してインド市場に参入しなければなりません。

日本は世界でも数少ない新しい技術を生み出すことが出来る国であり、多くの日本企業にとって高い技術力が大きな強みになるケースが多くあり、その技術力を守るためにインドの特許制度についてまとめ、より多くの日本企業の方々がインドでご活躍され、インド社会に貢献する一助になればと考えております。



インドの特許法は公共の利益のための科学的研究や技術の進歩を促進することを主目的として制定されました。この目的のために、ある期間内に発明の独占権を発明者に与えます。特許法は独占権を与えることで発明者に発明を、投資家に研究開発への投資を奨励しています。独占権によって、発明を商業化したりライセンスしたりして発明から収益を得ることが出来ます。特許法によるインセンティブの結果、発明者は新しい発明を行うことで、科学技術の進歩が促進されます。発明者が社会に発明を提供し、一定期間の独占権を獲得し、その後は発明は公共のものになることで社会的にもプラスの効果が生じます。


特許要件

インドで特許として認められるためには下記の要件を満たさなければなりません。

1.特許可能な対象
2.工業的応用性
3.新規性
4.進歩性
5.明細書が明記されていること

上記の要件を全て満たした時にのみ特許が授与されます。上記の要件を一つでも満たさない場合は発明は特許として認められません。


flow diagram


インドでの特許の取得のプロセスは以下のステップで行われます。

1.特許申請の出願
2.申請の審査
3.特許申請の公開
4.付与前異議表明
5.特許付与の公開
6.付与後異議表明

インドで特許を取得するには、インドの特許庁で所定の手数料と共に所定の申請フォームを提出することが必要です。特許庁は申請内容が特許要件を満たしているか審査し、申請者に審査報告を行います。もし報告に異議が含まれている場合、申請者は特許庁に返事を書くか、審査官に聴取を依頼します。申請内容が特許要件を満たしている場合、特許庁は発明に対して特許を付与します。
申請が出願された後、特許庁は申請または優先日から18ヶ月以内に申請内容を公開します。特許申請者の権利はこの公開日から始まります。公開された申請内容は少なくとも6ヶ月間の間、異議を受け付けます。特許庁から特許が付与された後、再度公開され、付与内容が公開された日から12ヶ月間異議を受け付けます。特許庁の判断については"Appellate Board"に上訴することが出来ます。


特許の修正と維持

特許申請者や特許権の保持者は、修正の申請を行うことで特許のライフサイクルの間いつでも特許の申請や付与された特許などを修正することが出来ます。しかし、裁判やAppellate Boardで特許や特許申請に関して侵害や撤回に関して審議されている場合は修正を行うことは出来ません。特許や特許申請の修正の申請はForm 13によって提出します。修正の申請に際して、特許保持者または申請者は修正案の内容と理由を記述しなければなりません。審査官が修正の理由が妥当であると判断すれば、修正が許可されます。修正案が特許の明細や応用方法などが変更される場合には、特許が付与された後に提出される修正の申請内容が公開されます。審査官は修正が客観的であるかについて決定する裁量を持っています。修正の申請が公開された場合、誰でも修正案に対して異議を唱えることが出来ます。修正の申請が公開された日から三ヶ月以内に異議の申告を提出することができます。修正に対する異議が提出された後、審査官は特許保持者または申請者にそのことを通告し、それぞれの当事者から聴取をする機会を設けた上で、決定を下します。特許の付与の際と同様に、修正のための異議の通告や供述書、証拠や聴取などを行うことになります。審査官が妥当と判断した一定の条件を課すことで修正を許可することがあります。


特許明細の作成

特許の申請者は特許の申請書と共に発明の内容を記載した特許明細を提出しなければなりません。明細書は特許の保護を受ける発明い関する技術的な情報を含む法律文書です。申請書は仮明細書または本明細書と共に提出します。仮明細書は一般的に発明者が発明を着想してから完成させるまでに時間が必要な場合に提出されます。仮明細書が提出されてから12ヶ月以内に本明細書を提出しなければなりません。

明細の目的は特許申請者が保護が必要な発明の詳細を公開することです。明細は発明の形態だけでなく発明の実施の方法も公開し、発明の境界線を明確に定義し、発明の保護を通知することができます。明細書は特許庁が特許の付与を決定するしたり、裁判所が特許を施行する際に使用される書類ですので、明細書の作成は非常に重要なプロセスです。


特許請求趣旨

請求趣旨は特許明細の最も重要な部分です。請求の目的によって特許申請者が特許の保護範囲を発明の境界線が定義されます。明細書だけで請求趣旨が明記されていなければ請求権を放棄していると考えられ、公のものとなってしまいます。
請求趣旨に基づいて発明の特許性や特許の侵害は審査されるため、請求趣旨は特許明細の主要な部分であるため、請求趣旨の作成はとても重要です。


特許の譲渡とライセンス

特許の保有者は特許の有効期限が切れるまでであれば、いつでもだれにでも特許を移転することができます。特許の移転は通常、譲渡かライセンスとなります。譲渡は特許における所有権の移転であり、ライセンスは特許の実施権を移転するものです。

譲渡やライセンスは二者間によって署名された合意書を締結することで成立します。譲渡又はライセンスの各当事者の権利や責任などの細則についてもこの合意書に含まれていなければなりません。合意書が締結された後には、特許の譲受人またはライセンシーは特許庁において審査官に申請を行い関連する変更をForm 16によって登録しなければなりません。譲渡又はライセンス合意書の認証謄本その他審査官に要求された書類を申請書と一緒に提出しなければなりません。登録されていない譲渡やライセンスの合意書は訴訟では審査官や裁判所による証拠としては受け入れられないので注意が必要です。

侵害と保護

特許の付与により特許保持者は発明に対して独占的な権利を手に入れます。特許の保持者は同意又は許可なしに他の第三者が発明に対する独占的使用権の実行を阻止したり排除したりすることが出来ます。

製品への特許は以下の独占的権利を付与します。
1.製造権
2.使用権
3.販売又は販売の提案権
4.インドへの輸入権

プロセスへの特許では、インドにおいてその手法又はプロセスを第三者が使用することを阻止する権利を得ることになります。更に、特許の保持者は、インド国内においてそのプロセスを使って得られる製品を製造したり、使用したり、販売したり、輸入したりすることを禁止する独占的権利を手に入れることが出来ます。特許の共同保有者は平等かつ不可分の権利を独立して行使することが出来ます。しかし、保有者は共同保有者の同意無しに特許の譲渡またはライセンスを行うことは出来ません。

特許の侵害
インド国内で特許保持者の許可無く特許権を持つ発明に対して権利を行使した場合、特許侵害の責任を負わなければなりません。以下の条件を満たした場合、製品またはプロセスはインドで付与された特許の侵害とみなされます。
1.問題になっている製品又はプロセスが特許における一つ以上の特許請求範囲に当てはまる。
2.特許保持者からの許可なしに特許保持者の独占権をインド国内で行使した。

特許侵害の例外
ある状況下であれば特許の侵害に責任を負いません。例えば、ある人の行動が特許化された製品やプロセスに対する特許請求範囲に当てはまったとしてもそのような状況下では侵害の責任を免れることが出来ます。以下の場合にこのような例外となります。

・政府の使用
・試験的使用又は教育的使用
・政府の承認を得るための使用
・並行輸入
・以前から発明が使用されていた場合
など


特許の撤回

侵害に関する裁判で最も一般的な反訴の一つが特許の無効または撤回です。一般的に侵害の訴訟で被告人は特許が有効ではないため特許侵害の責任を負うことは無いと反訴します。特許はその有効期限が切れる前であっても以下の理由で無効とされる可能性があります。

1.関係者による上訴
2.中央政府の申し立て
3.特許侵害裁判での反訴
4.特定の状態での高等裁判所判決
5.中央政府から指示を受けた特許審査官

Appellate Boardは、関係者又は中央政府からの上訴に基づいて特許の無効にする権限を持っています。しかし、特許の撤回に対する反訴が侵害の裁判対応して登録される場合は高等裁判所によって特許が無効とされます。特許が無効又は撤回されると証明するためには、上訴又は撤回の反訴を行う人が負担をしなければなりません。